ジャンク エアロを始めるにあたって決め事を二つ持った。一つはエアロをやってる事を誰にも言わないと言うことだ。 自分から始めたとは言え、まだまだ正木の中では男がするにはエアロなんて恥ずかしいスポーツ運動である事には何も変わってなかった。 もう一つは、エアロを上手くなると言うこと。 どうせやるからには上手くなることを目指すべきと考えていた。 そしてエアロを始めて半年、 正木はすべてのエアロのクラスに参加出来るまでになっていた・・・ しかし週3〜4回で半年もスタジオに通っていたら上手いか下手かは別にして一通りは誰でもできるようになるものだ。 それにここのFCは比較的エアロの難度がゆるかった、 何故か?ここは他とは違う老舗FCで作りが高級である。 フロントの受付は、ホテル並み、対応も運動スタッフではなくフロント専属の女性スタッフで、運動する以外の場所は土足厳禁でふわふわのカーペットが敷いてある。 更にソファーとテレビがある休憩室はこれもホテルのロービーとかわらない。 故に会員さんもいかにもアスリートって感じの人が、所せましとストレッチやキビキビと動いてる姿はここではあまり見あたらない。 これがここのエアロがゆるい理由かどうかは分からないが、他と比べると ここは静かな、心休まるFCとも言うべき雰囲気で、会員の年齢も高く 1階にはカクテルバーや会員制のマッサージルームまである。 そして更に3年の月日が過ぎ、 正木は32になっていた・・・・ 3年も同じFCにいると、少し飽きがくる。運動をサボって風呂だけに なりがちなる会員も多い。 エアロもイントラによって出たり出なかったり、プログラムがつまらない と会社に投稿は当たり前、しまいにはどこかいいFCはないか考え始める。もちろん10年目、15年目の方もいるが、その人方だって何回かは辞めようと思った時期があったはずだ。 しかし正木の飽きの理由は、他と少し違っていたそれは、エアロの上達について大きな 疑問を抱いていたからである。 自分が描いてるエアロが上手くなりたいと言う思いが、FCではどうしても正木にとっては理不尽なのだ。 それは何故か? すべての動きをマスターしても、足の運び方、手の伸ばし方、 それぞれイントラによって違うため、いつまでたってもこれでよし、と 言う感じがつかめないでいたのだ。 また、おかしな動きをしていても、ほとんどイントラから注意をされる事はなく、そのおかしな動きを何年も続けている人達も多く、 それでもコリオが出来ると言うだけで、上手いとされる事に納得がいかなかった。 故に正木の、上手くなりたいと言う欲求は、FCでは正確な基本動作やリズム感を学ぶ事無く、複雑なコリオやハードなレッスンをいかにこなせるか、いかにイントラについていけるかが、上手いとされる事への葛藤がふすふすと沸いていた。 そこには正木の思ってる上手いとは、とうていかけ離れたものに映っていたのだ。 しかしそれも考えてみればけしておかしな話ではない事に気づく、もし イントラが1人1人の動きに指導を入れていたらレッスンは成り立たないだろう。 しかもイントラによってフォームが全然違うのに、これが正しい何て決めたら尚更混乱を招く。 それに、FCの隅々を見渡しても、けして上手くなるなんてどこにも書いていないのだ、 あるとしたら健康にシェィプアップとか、健康にダイエット!などで、何十年通って上手くならなくても会社側には落ち度はまったくない。 「正木さん〜!」 その時1人のイントラが正木を呼んだ。 彼女は麻田洋子28才、来年結婚を控えていて、近々現役引退だ。 普段は昼間を担当していたのだが、プログラム改正と共に金曜日の夜に半年前に入ってきた。 麻田は、正木が普段から不満を抱いていたFCのエアロに対する一つの回答を持ってきた。 それは、麻田の通ってる競技教室に来ないかと言うのである。 正木はその話に興味深く耳を傾け、深くうなずき 来週から体験を兼ねて参加する事を約束した。 続く・・・ |
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